「相違ございません」は単純に「間違いありません」という意味なのでしょうか?この記事では本当の意味を知らないまま使っている人が多い「相違ございません」について例文と文例を使って解説していきます。今まで間違った使い方をしていた人はしっかりと確認しておきましょう。
「相違ございません」の意味とは?
敬語はその表現の豊かさや奥ゆかしさで、日本文化の美しさを感じさせてくれるものの一つですが、同時にとても難解で日本人でもしっかりと理解している人はそう多くはいません。
「相違ございません」もまた、非常に使い方を間違えやすい敬語の一つです。「相違ございません」の本当の意味をしっかり確認していきましょう。
「相違ございません」の「相違」の意味
「相違」は「相」と「違」の2つの漢字から成り立っていますのでそれぞれの漢字の意味を確認してみましょう。
「相」は、①(2つのものを向かい合わせて)互いに。②そのものを表す姿・形。という意味です。
「違」は、違う・異なる・一致しない。という意味です。それぞれを合わせると「相違」は、異なった姿・形という意味になります。
「相違」という言葉の意味も、同じでないこと。それと一致しないこと。ちがい。という意味でしたので、それぞれの漢字の成り立ちからも「相違」の意味を表現していることが分かります。
「相違ございません」の「相違」の由来
「相違」という言葉を作っている「相」と「違」ですが、それぞれの漢字にも由来があります。まず「相」ですが、この漢字の部首は「目」です。(木を)目で詳しく見る。という意味から姿・形を表すと変化しました。
次に「違」は、全く別方向に歩く足と道を表したものから、背き離れる。違う。という意味の漢字が成り立ちました。漢字ひとつとっても奥深い成り立ちや意味があるので勉強していくととても面白いでしょう。
「相違ございません」は正しい敬語?
「相違ございません」は、同じでない、違う、という意味の「相違」を打ち消す否定の「ございません」が付いているので「違いが無い、違わない」という意味という事が分かります。
そしてそれは確実に証拠や根拠がある物事を対象にしている為、推測や憶測での「違いが無い」とは別の意味を持ちます。
「相違ございません」はビジネスシーンで使用する敬語にふさわしいと言えますので、もし使う事を迷う場合には積極的に使うことをお勧めします。逆にフランクな間柄の仕事仲間とのやり取りで使うことは空気がおかしくなるので控えたほうがいいでしょう。
「相違ございません」の使い方
「相違ございません」を使う場面にはどういったものがあるのか、また、そのような場面でどんなふうに使うのが正しいのかを注意点なども合わせて確認してみましょう。
確認で「相違ございません」を使う場合
仕事を進める上で自分が知り得ている情報と、相手の持っている情報にズレがあると、後々大きな失敗や誤解を招くことに繋がります。
契約金額であったり、個人情報であったり、その重要性が高ければ高いほど確認する重要性も比例して高まります。間違いが起こる前に「こちらの内容で相違ございませんか?」と確認することはとても大切な役割を持っています。
相手も内容を再度確認することで安心できますし、もしも間違いがあれば手遅れになる前に発見し修正することができます。
「相違ございませんか?」と相手に確認することはコミュニケーションを取るだけでなく、相手との信頼関係を築くためにも活用できるのです。
謝罪に「相違ございません」を使う場合
謝罪で「相違ございません」を使うこともあります。なにかの手違いが起きて取引先やお客様に迷惑をかけてしまった時に相手からクレームが来ることはとても多くあります。
それに対して謝罪する際、文例1「実はこれにはこういった経緯がありまして…(説明)ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。」
と言うのと、文例2「その事実に、相違ございません。今回の件に関しては誠にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
と言うのでは相手への敬意の表れが全く違ってきます。この文例1の謝罪ように、先に言い訳を伝えようとするのは相手からしたら気分がいいものではありません。
相手が興奮して怒っている時は特に言動も慎重にならなくてはなりませんが、文例2のように非を認めて何よりもこちら側の誠意を見せる事が解決への近道です。
そういったことからも「相違ございません」という言葉で相手の意見に同調した上で謝罪することは、怒っている相手にこちらの話も聞き入れてもらいやすくなります。
ただし、全くのデタラメや言いがかりに対して使うと、足元を見られることになりかねませんのでその時の状況によって使い分けるように注意しましょう。
「相違ございません」を使うときの注意点
仕事でのやり取りの中でもメールなど履歴が残る連絡ツールで、実は根拠もなく言っていたことが後からなにかしらのトラブルの原因になることもあります。
そういったことを回避するためにも、裏付けのない事実に関しては「相違ございません」を使うことは避け、本当に確証が取れている事柄についてのみ「相違ございません」を使うように気をつけましょう。
「相違ございません」の例文
「相違ございません」という言葉は様々なシーンで使うことができますが、それぞれのシーンでどのように使うのか、文例や例文と合わせて確認していきましょう。
「相違ございません」を使って相手に賛同する例文と文例
ビジネスの相手とのやり取りの中で、相手と同じ考え、または相手がこちらの考えと同じだった場合にその通りという意味で「相違ございません」を使うことができます。
例文「○○様のご認識の通りで相違ございません。こちらの商品は〇月〇日を持って終了となりますので、以後ご購入は出来なくなります。」
文例:Aさんの所属している部署では新開発のシステムを活用するかどうかの協議をしていました。Aさんの上司の○○課長が新開発のシステムを使用するメリット・デメリットを考慮したうえでも使用した方が格段に業務がスムーズになると意見を出しました。
Aさんはそのあとに意見を求められてこう答えました。「〇〇課長のおっしゃる通りで、私もそのお考えに相違ございません。是非新システムを活用するべきだと存じます。」
この例文と文例のように、相手の意見を肯定することで相手を立てつつ、自分の意見も述べることができます。
「相違ございません」を返答に使う例文と文例
確認すべきことに対して明確な答えが出ている時は、相手からの信頼性があがるので「相違ございません」を使って返答しましょう。
文例:Aさんは取引先のCさんからメールで来週の打合わせの内容確認をされました。Cさんに「打合せの内容はこちらで間違いないですか?」と添付資料と一緒に尋ねられたので、Aさんは「はい、相違ございません。よろしくお願いしいます」と伝えました。
例文「先日定例会議を欠席してしまったのですが、その時の資料はこちらでよろしかったでしょうか?」「はい、こちらにある資料で相違ございません。内容のご確認をお願い致します。」
例文「弊社への発注内容はこれでよろしかったでしょうか」「はい、相違ございません。引き続きよろしくお願いいたします」
例文「新商品で不具合があったのはこれですか?」「はい、そちらで相違ございません。現在は生産をストップしております。」
などがあります。「相違ございません」を使うと相手に安心感を与えることができ、より会話に信頼性を持たせることができます。
「相違ございません」と「相違ありません」の違いと使い分け
「相違ございません」と「相違ありません」は同じ意味と取る事ができますが、どのような違いがあって、どう使い分けるのが正しいのでしょうか。
「相違ございません」と「相違ありません」の違い
「相違ありません」は「相違ない」の丁寧表現で「相違ございません」は「相違ない」の敬語表現になります。
「相違ございません」と「相違ありません」の使い分け
「相違ございません」と「相違ありません」はどちらもビジネスシーンではよく使いますが、目上の方や取引先の方、お客様に対して使う場合は「相違ありません」よりも「相違ございません」を使うほうがより丁寧で失礼がない対応ができます。
人と人のやり取りではより温かみのある言葉の方が相手に好印象を持ちます。「相違ありません」よりも「相違ございません」の方がより柔和な印象を相手に与えやすいので、良い印象を持たれたい大事な場面では「相違ございません」を使うように心がけましょう。
「相違ございません」の類語・言いかえ表現
「相違ございません」は違いがないという意味でしたが、それと同じような意味を持つ表現は他にも「間違いありません」「問題ありません」等があります。
「間違いありません」「問題ありません」がどのような意味で使われているか確認して場面にあった使い分けをする事も大切です。
「間違いありません」の意味と使い方
「間違いありません」の「間違い」の意味を確認してみると、正常のものとくい違うこと。真実と違うこと。誤り。とあります。
「相違」と限りなく近い意味を持っていますので、「相違ございません」は「間違いありません」と同じ意味として活用することができます。
しかし、必ずしも全てにおいて「相違ございません」は「間違いありません」に置き換えることができるかというとそういうわけでもありません。
「相違ございません」と「間違いありません」の違いについては、「相違ございません」はその事実を確実なものとする証拠を得ている状態、「間違いありません」は確信的な、間違いないと信じて疑わない状態のことを指します。
「この問題は御社のシステム異常によるもので起きたことなのでしょうか?」という問いかけに対して
文例1「はい、そうに間違いありません」と答えるのと、文例2「はい、その見解に相違ございません」と答えるのとでは、全く印象が違います。
文例1の意味は、きっとそうに違いない、そうに決まっているという可能性で返事をしているのに対して、文例2の意味は、自分たちのシステム異常が起こした問題である。と言い切れているので、回答の信憑性が全く違ってきます。
とても近い意味を持ち合わせている「相違ございません」と「間違いありません」の言葉ですが、こうしてみると全く違う意味を持つ言葉に取れます。
「相違ございません」と「間違いありません」のそれぞれの持つ意味をしっかりと考えながら使い分けましょう。
「問題ございません」の意味と使い方
「問題」の意味ですが、これには多くの解釈の仕方があります。多くは「問題にする必要がない」「問題にならない」つまり「大丈夫」という意味として使います。
例文「こちらの商品でよろしいでしょうか。」「はい、その商品で問題ございません。」というような使い方をします。
「相違ございません」に比べると、とてもざっくりとした意味で使われることが多いので比較的使いやすいでしょう。それぞれに適した場面で使い分けができると、より流れのいいやり取りをすることができます。
「相違~」の他の表現まとめ
「相違ございません」以外にも「相違」を使った表現はいくつかあります。「相違点」や「相違があります」などがそうです。それぞれがどのような意味を持ってどのような使い方をするのか確認してみましょう。
「相違点」の意味と使い方
「相違点」の意味を調べると、ある物ごとを比べたときの違う性質、値。自分の考えと相手の考えの違う部分。などとあります。反対の意味を持つ言葉に「共通点」があります。
比較したときに一致しないところ、違いがあるところ、という意味合いで様々な表現に使うことができます。
例文1「彼と彼女の考えにはいくつか相違点があった」例文2「2つの資料を比較すると以下のような相違点がありました」などがあります。
「相違」と「相違点」はほとんど同じ意味で使われますが、相違は一部よりも全体を表す時に、相違点は一部分を表す時に使うといいでしょう。
「相違があります」の意味と使い方
「相違があります」の「相違」は違いという意味ですが、それに「あります」が付いているので「違いがある」という意味になります。
「相違ございません」は違いがないという意味だったので、「相違があります」はそれとは真逆の意味になります。物事を比較した際に明確な違いがある場合に使います。以下の例文を確認してみましょう。
例文1「サンプル写真と実物とでは印刷の関係で色味に若干相違があります。」
例文2「先日お渡しした企画書と今回のものとでは大きな相違があります。」
このような使い方をします。「相違があります」を「違いがあります」に入れ替えて使うこともできますが、「相違があります」を使うことでよりビジネスシーンに適した表現になります。
相手に幼さよりも仕事ができると見せるには表現を幼稚なものから変えていくべきでしょう。
「相違」と「相異」の違い
「相異」と「相違」は読み方がどちらも「そうい」で、漢字も「異」と「違」が違うだけでとても似ています。それぞれの持つ意味は同じなのでしょうか。また、使い分けは必要なのでしょうか。確認してみましょう。
「相異」の言葉の意味
「相異」は「相」と「異」という漢字から成り立っている言葉ですが、漢字の意味を確認してそこから言葉の意味を理解していきましょう。
「相」という漢字には、①(2つのものが)互いに ②そのものを表す姿・形。という意味があります。
「異」という漢字には、2つのものの間に差がある、違っているという意味があります。それぞれをかけ合わせてみると、互いに違っている姿・形という意味になります。
これは「相違」の意味とほとんど一緒ということになります。では、使うべき場面や使い方は違うのでしょうか。
「相異」の使い方
「相異」は「相違」と同じ意味を持っている名詞ですが、表現が他にも、「相異なる」(アイコトなる)という動詞として使われることがあります。意味は「相異」と同じで、互いに同じでないこと。となります。
「この2つの性質にはそういがある」という言葉を漢字に直すときには「相異」ではなく「相違」を使う事が一般的です。「相異」を使うのが間違いかというと、「相違」は「相異」とも書く。としている場合もあるので完全な間違いとも言い切れません。
しかし、一般的に「相違」を使うことで統一されているので、ビジネスシーンでは「相違」を使うように心がける事が望ましいでしょう。
相手に誠意を見せることでビジネスはもっとうまくいく
「相違ございません」を使うと相手に対して謝罪する場面などのピンチも誠意をうまく伝えることで回避することができ、確証の取れた答えを伝えることで信頼も得ることができます。
ビジネスでは、誠意を伝えることで信頼を得て、それが評価へとつながっていきます。小さな積み重ねから大きな成果を出せるように、是非「相違ございません」を取り入れていきましょう。


