ビジネスで「お聞かせください」を使おうと考えている人がいるかもしれません。しかし、敬語は正しく使わなければ、相手に対して失礼になってしまうでしょう。「お聞かせください」を実際に敬語としてビジネスで使う際の注意点や使い方、言い換えについて紹介します。
「お聞かせください」の意味とは
「お聞かせください」はビジネスやメールなどで使われることが多いです。敬語として認識されているのですが、実際のところ「お聞かせください」がどういう意味なのかわからない人がいるかもしれません。「お聞かせください」の意味について解説します。
相手のご意向や予定などを尋ねる
主にビジネスで相手に対してご意向や予定などを尋ねたい場面があるものです。
そのときには、敬語として「お聞かせください」が使われることが多いでしょう。
ビジネスでは相手に失礼があってはいけません。そのため、敬語を使うことになるのです。
「聞かせ」に「お」がついていることによって、これは丁寧な表現となっています。
また、「ください」とは「くれ」を尊敬語にしたものであり、敬語の一種であると思われています。
ご意向を尋ねるのに、失礼な表現をするべきではありません。そこで「ご意向をお聞かせください」という文例のように使われることがビジネスでは多いのです。
「ください」は命令のニュアンスがある
厳密には「お聞かせください」は目上の人に対する正しい敬語とはいえません。
それは「ください」に問題があるからです。この「ください」には命令のニュアンスが存在しているため、目上の人に使うのは失礼になってしまうかもしれないのです。
「ください」は「くれ」の尊敬語であり、尊敬語というのは目上の人の行動を高めるための表現です。
そのため、「お聞かせください」は相手の行動を高める意味があるのですが、「してください」には命令のニュアンスが含まれてしまうのです。
たとえば、「~してくださって感謝いたします」は敬語としてまったく失礼ではないのですが、相手に行動を要求する「してください」はたとえ尊敬語である「ください」を使っていても失礼に思われるかもしれないです。
「お聞かせください」の使い方・注意点
これからビジネスで「お聞かせください」を使おうと考えている人がいるかもしれません。しかし、「お聞かせください」は使い方に注意しないと逆に失礼になることがあります。「お聞かせください」のビジネスにおける使い方や注意点について解説します。
「お聞かせください」を使うときの注意点
それでは具体的に「お聞かせください」を使うときの注意点について下記に解説します。
上司・目上の人に使わないほうがいい
基本的に上司や目上の人に対して「お聞かせください」はあまり使わないほうがいいです。
「ください」は要求や命令をするという意味合いがあるため、そんな言葉を上司や目上の人に使うのは、相手を敬っているとは思えない言葉遣いとなります。
ただし、最近は「お聞かせください」という言葉が慣用的になっており、問題なく使われているケースはたくさんあります。上司や目上の人も「お聞かせください」といわれても怒らないかもしれないです。
しかし、相手が敬語に厳しかったり、言葉遣いに敏感だったりする場合は、「お聞かせください」の命令的なニュアンスに引っかかってしまうこともあります。相手を不快にさせないためにも「お聞かせください」を使わないほうが無難です。
目下に対してはそのまま使える
「お聞かせください」は自分よりも目下や同等の立場の相手に対してならば問題なく使うことができます。
「お聞かせください」は命令や要求を丁寧に表現した言い回しのため、相手が上の立場でなければ、ビジネスでどんどん使って構わないのです。
たとえば上司が部下に対して「聞かせろ」や「教えろ」と言うよりも、「お聞かせください」と丁寧に言ったほうが好かれやすくなるでしょう。目下の人にもビジネスでは敬語を使う場面はたくさんあります。
敬語には注意点がたくさんあります。しかし、その注意点は目上の人に敬語を使う場合のものであり、目下の人への注意点は基本的にありません。
ケースバイケースで使える
ビジネスにおける敬語はとても難しいものです。
たとえば、取引先や社外の人に対しては、基本的に正しい敬語を用いるべきです。
ちょっとした言葉の使い方で相手を不快にさせる可能性があるのです。
そのため、細心の注意を払いましょう。
ただし、社内の人間に対しては、敬語を常に使えばいいというわけではないです。あまりにもかしこまった言葉遣いをするのは、同じ組織の一員に使うのは他人行儀であるという人もいるからです。
また、社内の言葉遣いは実用性を優先させるケースがあります。細かな言葉遣いを社内で気にするのはナンセンスであるという意見もあります。そのため、社内の上司や先輩などには「お聞かせください」を使えるケースもあるのです。
「お聞かせください」を上司・目上の人に使うときの敬語表現
ビジネスで目上や上司に「お聞かせください」を使うべきではないのですが、それではどういう言い換え方をすればいいのでしょうか。上司や目上の人に失礼にならない「お聞かせください」の言い換え表現について紹介します。
「お聞かせ願えませんか」がより適切な表現
「お聞かせください」で問題となるのは「ください」の部分です。
つまり、ここを別に言い換えることによって、より適切な表現になります。
そこで、たとえば「お聞かせ願えませんか」という言い換え方があるのです。
これは「ください」という命令や欲求の形ではなくて、「願えませんか」とあるように願望を伝える表現となっているのです。願望を伝えるのは上司に対して失礼にはなりません。むしろとても謙虚な姿勢であり、敬語として正しいと思われるでしょう。
たとえば、上司のご意向をうかがいたいときには「お聞かせ願えませんか」と言ってみましょう。特にあまり親しくない人のご意向を聞きたいときには、「お聞かせください」を使わないほうがいいのです。
「お聞かせ願えますでしょうか」
「お聞かせください」をお願いに言い換えることによって、上司にも問題のない表現でご意向をうかがえます。
その際には「お聞かせ願えますでしょうか」という聞き方があります。こちらは「願えませんか」と同じぐらい丁寧なご意向の聞き方となっています。
ただ「お聞かせ願います」と言うだけよりも、「願えますでしょうか」とするほうがより丁寧になるのです。あるいは「お聞かせ願えれば幸いです」や「お聞かせ願いたく存じます」という言い方もあります。
「お聞かせ願いたい」としても正しいのですが、これだけだとぶっきらぼうな言い方になってしまいます。上司に使う敬語は語尾に注意しましょう。
「お聞かせいただく」
「お聞かせください」の注意点は命令になっていることです。
そこで「お聞かせください」を「いただく」に言い換える方法があります。
「お聞かせいただく」であれば、命令のニュアンスがなくなります。
もっと丁寧な言い方だと「ご意見をお聞かせいただければ幸いです」と使うこともできます。
「お聞かせいただきたく存じます」という言い方も敬語として正しいです。このような文例を参考にして上司に使ってみましょう。
ご意向を聞きたい相手が上司や目上の人ならば、ちょっとした言葉遣いに気をつけるべきです。
「お聞かせください」の例文【ビジネス・メール】
実際にビジネスやメールで「お聞かせください」を使いたいならば、文例を参考にすると文章を書きやすいです。ビジネスやメールなどでの「お聞かせください」の使い方を文例を交えて紹介します。
「お聞かせください」の例文【ビジネスの基本】
「お聞かせください」をしっかりとビジネスで使いこなしてください。ビジネスで利用するための文例を紹介します。
都合のいい日時を尋ねるとき
文例 ・「○月○日○時までに都合のいい日時をお聞かせください」 ・「そちら様のご都合をお聞かせください」 |
たとえば、ミーティングをすることになって、関係者のスケジュールを調整しなければいけないことがあります。その際には、「お聞かせください」を用いて都合のいい日時を尋ねるのです。
この場合、目上の人以外にも聞くことがあるでしょう。ご意向を聞くときに、相手が目下の人や同格の人であれば、「お聞かせください」を用いてこの文例のように尋ねるとよいです。
ビジネスはスピード感が大切です。そのため、あまりにもかしこまった表現で意図が伝わらないよりも、目上に対して多少敬語として間違いがあっても実用性を重視することが許される場合もあります。
意見や感想を求める
文例 ・「ご感想やご意見をお聞かせください」 ・「今の気持ちをお聞かせください」 |
たとえば会議やミーティングをしていて、司会担当の人がこの文例のように使うケースがあります。司会者という立場であれば、「お聞かせください」を使うのは自然なことです。ミーティングであまりにもかしこまった言い方は逆に不適切となるのです。
会議やミーティングのような場でご意向を尋ねるときには、シンプルな言葉遣いをしましょう。
「お聞かせください」の例文【メール編】
「お聞かせください」はメールで使うことも多いです。その際に文例を参考にすることで問題を避けられます。メールで「お聞かせください」を適切に使うための文例を紹介します。
メールで意見を求めるとき
文例 ・「皆様の声をお聞かせください」 ・「ご意見・ご要望をお聞かせください」 |
たとえば、多くの方に向けてメールで意見やご意向などを求めることがあります。そのときには、「お聞かせください」がよく使われます。特定の相手に意見を求めるのではない場合は、「お聞かせください」を使っても問題にならないことが多いです。
ただし、注意点として特定の目上の人に使うのはやめたほうがいいです。この場合はメールの文章を言い換えることをおすすめします。
「お聞かせください」と「ご教示ください」の違い・使い分け
「お聞かせください」とよく似た意味や場面で使われるのが「ご教示ください」です。これらは一体どのような違いがあるのでしょうか。そのまま言い換えられるのでしょうか。違いや使い分け方、注意点について紹介します。
「ご教示ください」は命令のニュアンスがある
「ご教示ください」や「お教えください」などは「お聞かせください」と同様に「ください」がついているため、目上の人に使うのは控えたほうがいい言葉遣いです。「ください」がそもそも目上の人に使うのはニュアンスがおかしいからです。
ただし、相手が親しい人ならば、目上の人に「お聞かせください」や「ご教示ください」のどちらを使っても問題ないです。相手に合わせて使い分けることをおすすめします。
教えを請うならば「ご教示ください」
ご意向を尋ねるならば「お聞かせください」が適切ですが、アドバイスや助言をもらいたいならば「ご教示ください」のほうが適切です。たとえば、親しい上司に仕事を教えてもらいたいときには「ご教示ください」と伝えましょう。
「お聞かせください」は幅広く使える表現であり、「ご教示ください」は「教えてもらう」ことに限定されています。そのため、何か教えてもらいたいことがあるならば、「お聞かせください」よりも「ご教示ください」のほうが適切でしょう。
「お聞かせください」の類語・言い換え表現
「お聞かせください」はそのままでは目上の人にメールや口頭で使うには注意点がたくさんあります。そのため、類語や言い換えをすることでより適切な言葉を使えます。「お聞かせください」の類語や言い換え表現を紹介します。
「伺いたい」
「お聞かせください」は「ください」の部分に問題があります。したがって、「聞く」の謙譲語である「伺う」を用いた「伺いたい」を「お聞かせください」の言い換えとして使うことができます。
謙譲語というのは自分がへりくだるという表現であり、自分を下げることによって、相対的に相手を高めることができる言い回しとなっています。そのため、目上の人に謙譲語を使うのは正しい敬語なのです。
たとえば文例としては「ご意見を伺いたい」や「都合のいい日時を伺いたい」などと使いましょう。
「拝聴したい」
「聞く」の謙譲語が「拝聴する」です。そのため、目上の人に対して「ご意見を拝聴したい」といえば、まったく失礼な部分のない敬語表現となります。何か聞きたいことがあるならば、「拝聴」という言葉を使えるようになりましょう。
ただし、「拝聴」はかなりかしこまった表現です。そのため、親しい上司にアドバイスを求めるのに使うべきではないです。また、注意点として実際に使う際には「拝聴させていただきたい」や「拝聴したく存じます」など語尾を工夫しましょう。
「ご意見をいただきたい」
ご意向を聞きたいときには、「ください」ではなく「いただく」を使うべきです。そして、相手の意見を聞きたいならば、そのまま「ご意見をいただきたい」と使えば失礼にならない「お聞かせください」の言い換えとなります。
目上の人には「ください」ではなくて「いただく」を使うことを常に意識するとよいです。「ください」という言葉は極力目上の人に使うべきではありません。
「いただく」という言葉は謙譲語であり、目上の人に便利に使える表現なのです。「お聞かせください」は謙譲語が含まれていないため、敬語としては使いにくい言い回しです。
「お聞かせください」の使い方に注意しよう
最近、ビジネスでよく「お聞かせください」が使われています。「お聞かせください」は一見すると敬語として正しいように思われるのですが、実際には失礼なニュアンスが含まれています。そのため、こちらで紹介した注意点を意識して使いましょう。


