社会人になると、何かにつけてお礼状を出す機会が増える物です。しかし、お礼状をどのように書いたらよいのかわからず、挨拶など例文を参考にしたい方も多いでしょう。今回は面接などさまざまなケースでの例文を含めて、お礼状の書き方や例文、テンプレートを解説いたします。
お礼状の書き方
お礼状を出す場合、ビジネスメールにしても手紙やはがきにしても、書き方の基本的なポイントは共通です。例文とともに、まずお礼状の基本をしっかり押さえましょう。
お礼状は相手に適した言葉遣いを
お礼状を送る相手と自分との関係性によって、お礼状での言葉遣いは変わってきます。会社対会社の場合は「目上」扱いとなります。お礼状の場合、ビジネス文書ほど漢字を多用する必要はありません。
お礼状の送り先 | 言葉遣い | 例文 |
個人的な友人 年下の同僚 | カジュアル | 「ありがとうございました」 「助かりました」 |
目上の人(会社) | 敬語 | 「御礼申し上げます」「感謝いたします」 |
お礼状は基本を逸脱しない
手紙やビジネスメールには、テンプレート(基本的な構成の見本、文章の雛形)があります。
テンプレートにこだわらない自由な書き方は、お礼状を書き慣れた上級者のすることです。ビジネスではリスクは回避すべきなので、平凡であっても、まずはお礼状のテンプレートに沿って基本を外さない書き方をしましょう。
本文はあくまでもお礼のみが基本であることを忘れないようにします。お礼状なのに何か別の頼みごとをするなど、主旨を逸脱しないようにします。丁寧な言葉遣いをするにせよ、お礼状の内容はシンプルなものにします。
お礼状の基本構成
お礼状のテンプレートは4つのパートで構成されます。前文・主文・末文・後付です。順を追って説明いたします。
お礼状の前文パート「頭語」
お礼状のいちばん始めにあるパートを前文といいます。前文はさらに「頭語」「時候の挨拶」「相手を気遣う言葉」の3つに細分化されます。
頭語とはお礼状の頭に書く挨拶です。普通の手紙でいえば「拝啓」ですが、お礼状を出す相手がすごく目上の人であれば「謹啓」を用いるのが書き方のマナーとなります。取引先の場合は、対等な関係性なのか下請けなのかでも表現を選びます。
あなたが女性の場合、それほどかしこまる必要のない相手であれば「謹んで申し上げます」という書き方もあります。また親しい人へのお礼状であれば、「前略」として前文を省略しても構いません。
お礼状の前文パート「時候の挨拶」
時候の挨拶は四季の豊かな日本ならではの習慣です。二十四節気にもとづいた季節の挨拶語が使われます。1月であれば「新春の候」や「厳寒の候」などです。かしこまったお礼状では、時期にふさわしい「~の候」を使います。
ややカジュアルなお礼状では、季節感のある身近な事象を代わりに使う書き方もあります。「花火大会の時期となりました」などです。ただし九州と北海道では当然、季節感が異なりますので、お礼状の相手が住む地域も考慮しましょう。
下にひとつリンクしましたが、当サイトには1月から12月までの時候の挨拶を、月ごとに詳しく解説した記事もありますので参考にしてください。
なお書き方ですが、頭語と時候の挨拶の間は一文字空けます。または改行してから一文字空けて書き始めます。
お礼状の前文パート「相手を気遣う言葉」
定番フレーズは個人宛てのお礼状ならば「おかわりありませんか」「いかがお過ごしでしょうか」です。
例えば転勤や退職など、ビジネスでは同じ文面で複数の宛先にお礼状を出すケースもあります。そのようなときは「皆さまますますご健勝のことと慶びいたします」など、複数相手の言い回しを使います。会社としてお礼状を印刷する場合も同様です。
お礼状の主文パート
お礼状のメインといえる部分が主文パートです。突然本題に入らないように、まず「起語」から始めます。「起語」は「さて」や「この度は」を使います。
カジュアルなお礼状では「先日は○○をありがとう(ございました)」として、もうひとこと加える程度でも構いません。しかしビジネスで出すお礼状では、「ありがとう」では少々軽い印象になってしまいます。テンプレートでは以下のような例文から主文に用いる表現を選びます。
「感謝」系 | 「お礼」「御礼」系 |
感謝の気持ちでいっぱいです。 | 深くお礼申し上げます。 |
心より感謝申し上げます。 | 心より御礼申し上げます。 |
感謝の言葉も見つかりません。 | お礼の言葉もありません。 |
お礼状の末文パート(結びの挨拶)
お礼状を締めくくる役割をするのが末文パートです。このパートは「結びの挨拶」と「結語」から構成されます。
結びの挨拶は相手への思いやりの気持ちを示すものです。テンプレートでは以下のような例文があります。
今後ともよろしくお願いいたします。 |
ご自愛のほどお祈りいたします。 |
ご多幸をお祈り申し上げます。 |
一層のご活躍を祈念しております。 |
ますますのご発展をお祈り申し上げます。(会社) |
なお結びの挨拶は時候の挨拶と組み合わせて使うことが多いです。テンプレートの定番フレーズは「季節柄、くれぐれもご自愛ください」です。「季節柄」は四季を問わずに使用できる書き方です。「暑さ(寒さ)厳しき折り」もよく使われます。
お礼状の末文パート(結語)
結語は頭語とセットになっています。ばらばらにチョイスすることはできません。それぞれのカテゴリーのなかで、組み合わせは自由に選んで構いません。
カテゴリー | 頭語 | 結語 |
一般的なお礼状 | 拝啓/拝呈/啓上 | 敬具/敬白/拝具 |
前文を省略 | 前略 | 草々 |
丁寧なお礼状 | 謹啓/謹呈/謹白/恭啓/粛啓 | 謹言/謹白/敬白/敬具/頓首 |
なお、女性だけが使用できる結語「かしこ」は、どの頭語にも使える便利な結語です。個人的な手紙やはがきであれば問題ありませんが、会社としてのお礼状においては使用を回避することが一般的です。
お礼状を書くときのマナー
せっかくお礼状を出しても、マナー違反をしていたら逆効果にもなりかねません。ビジネスで書くお礼状であれば尚更、失礼があってはいけません。手紙やはがきのお礼状の書き方について、押さえておくべきポイントをいくつか挙げてみましょう。
お礼は速やかに伝える
感謝の念を伝えるときは、とにかく時間をおかずに、可能な限り早く送ることがマナーの重要なポイントです。社外の人との打ち合わせや食事会、訪問後のお礼状メールは基本的に当日、遅くとも翌日できるだけ早く送信します。面接のお礼状も同様です。
ビジネスに限らず手紙やはがきのお礼状も、あまり時間が経ってしまっては失礼になる恐れもあります。何日後までにという決まりはありませんが、目安として3日以内と一般的にいわれています。
例外は転勤や退職のときに出すお礼状です。友達や職場の人たちから何か品物をもらったりした場合は、新生活を始めてから1週間前後でお礼状を出すようにします。感謝の言葉とあわせて、新生活の様子や新天地での発見などをお礼状に書き添えるためです。
お礼状はいつも以上の注意を
お礼状で失礼があってはいけません。誤字や脱字、ビジネスメールでの変換ミスにはいつも以上に気をつけてください。お礼状において相手の名前など固有名詞の間違いはもっての外です。
「お礼」「感謝」で要注意の言い回し
主文パートの説明で例文とした「感謝の言葉も見つかりません」「お礼の言葉もありません」はともによく使われる言い回しではありますが、文字どおり「お礼の気持ちがありません」というニュアンスに誤解されてしまう場合もあります。
このフレーズは単独で使わないことが肝心です。例文のように、前に言葉をプラスして用いるようにしましょう。
例文
・本当になんと申し上げてよいやら、お礼の言葉もありません。
・こんなにまでしていただいて、感謝の言葉も見つかりません。
内祝いのNGワード
結婚や出産の内祝いに添えるお礼状では「お返し」はNGワードになります。
実際には「半返し」などといって貰った品物の半額程度の品物をお返しするのですが、それでも「お返し」は使わないように注意してください。
また現金で結婚や出産のお祝いを頂いたときは、まず電話で受け取ったことを先方に知らせてから、改めてお礼状を書きましょう。
手紙とはがき共通のお礼状マナー
お礼状の文字は縦書きが原則になります。個人的に親しい人には横書きでも構いませんが、特に目上の人に出すお礼状は縦書きすることもマナーです。便箋は縦罫の商品を選んでください。
同様に宛名も縦書きが原則です。したがって番地などは漢数字で書きます。マンション名や会社のビル名も省略せずに書きます。はがきの場合、差出人の住所は表に書くようにします。
会社宛にお礼状を出すときの注意ですが、会社名と部署名の間は一文字空けます。会社名か部署名の文字数が多すぎる場合は改行して書きます。同姓同名の社員がいる可能性もありますので部署名や役職名も書きます。役職名は氏名の上に書きますが、役職名が5文字以上の長いものであれば名前の下に書きましょう。
鉛筆は論外ですが、ボールペンもお礼状にはふさわしくないとされます。毛筆は無理だとしても万年筆かインクペンで書くようにします。書き間違いをしてしまったら、お礼状は最初から書き直します。修正ペンや修正テープ、修正液はマナーとしてNGです。
お礼状に適した便箋と封筒
お礼状は縦書きが原則ですから、当然便箋も縦書き用にします。また白無地が原則で、色柄ものは避けます。
封筒も同様で、デザインものや色のついたものは避け、白無地の「長4」というサイズの封筒にしましょう。
はがきのお礼状
本来のお礼状は手紙(封書)で出すものです。しかしビジネスメールでのやりとりが普通となっている現在、お礼状をはがきで出しても十分に感謝の意は伝わる、とする価値観が広まりました。
お礼状をはがきにする際は、ビジネスのお礼状であっても横書きをマナー違反としない風潮はありますが、お礼状を受け取る側の価値観次第ですので、はがきでもお礼状は縦書きが望ましいといえます。
お礼状のテンプレート・雛形【はがき・手紙】
それではお礼状のテンプレートを、はがきと手紙それぞれ紹介いたします。サイトのレイアウトの都合上、縦書きにできませんのでご承知おきください。
お礼状のテンプレート・雛形【はがき編】
営業訪問のお礼状テンプレート
拝啓 昨日はご多忙の折りお時間を頂戴しまして、ありがとうございました。 また私の説明を聞いていただけたことに深く感謝しております。 ○○様からご指摘いただいた点は課内で検討し、次回お目にかかる際には貴社のお役にたてるご提案を持参したいと考えております。 どうか今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。 敬具 |
親子で先生に出すお礼状テンプレート
○○先生 ○年間、何度も相談にのってくださり、本当にありがとうございました。先生のご指導のおかげで最後まで部活を続けることができました。地区大会は残念な結果でしたが、あのとき流した涙は一生の宝物です。社会人になっても、友達と励まし合った日々を忘れずに仕事に取り組もうと思います。先生もどうかお体を大切になさってください。 ○○先生には親子共々大変お世話になりました。入学当時は人見知りの激しかった○○(子供の名前)でしたが、先生が優しく、ときに厳しく指導してくださったおかげで、たくさんの友達もでき意義深い○年間を過ごせました。本当にありがとうございました。 |
お礼状のテンプレート・雛形【手紙編】
手紙ははがきよりも文字数が多くなりますので、時候の挨拶や本文も長めの書き方をします。以下のテンプレートは都合上横書きですが、実際に書くときは縦書きしてください。
拝啓 寒さが一段と身にしみる頃なりましたが、いかがお過ごしでしょうか。 このたびは信州の真っ赤なりんごをお送りいただきありがとうございました。箱を開けた瞬間に、りんごの甘酸っぱい香りが部屋に広がりました。 「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」というイギリスの格言があるそうです。子供も大好きですので、長く楽しめるように、さっそくインターネットでりんごの保存方法を調べました。 いつも○○様のお心遣いには深く感謝いたしております。 季節柄、風邪が流行り始めたようです。どうかくれぐれもご自愛ください。 御礼にて失礼いたします。 敬具 |
お礼状の例文【ビジネス・面接・挨拶】
続いてビジネスの場面別にお礼状のテンプレートをいくつか紹介いたします。
お礼状の例文【ビジネス編】
取引先と食事や宴席を共にすることはよくあります。そのようなときも可及的速やかにお礼状を送ります。費用が先方負担であれば尚更です。その際は、次の機会にはこちらが費用負担したい旨も申し添えましょう。
昨日は食事の席にお招きいただき、誠にありがとうございました。 美味しい旬のお料理もさることながら、貴社の皆様と貴重なお時間を過ごさせていただいたことに深く感謝申し上げます。 職場とはまた違った雰囲気の中で、普段はなかなか聞くことのできない経験談などを拝聴することが出来、大変参考になりました。 ご馳走になってしまい恐縮しております。次の機会にはお返しをさせていただけましたら幸いでございます。 今後ともよろしくお引き立てのほどお願い申し上げます。 |
お礼状の例文【面接編】
就活の面接後にお礼状を送る学生もいます。面接で伝えられなかった入社への熱意などを、あらためて訴える効果もあります。面接の機会を与えてもらったことに感謝して損はありません。
また面接担当者によっては、日に何十通、何百通ものビジネスメールが届きます。面接を受けた他の学生と差別化を図る意味でもお礼状を出す価値はあるでしょう。下のテンプレートのように簡潔な内容で十分です。
担当面接官の所属や名前を把握できなかった場合は、「新卒採用担当者様」として面接官に届きやすいようにします。
☆☆大学○○学部◎◎科の◇◇一男です。 先日はお忙しい中で私に面接の機会をいただき誠にありがとうございました。 とても緊張してしまいましたが、仕事を遂行するうえでの心得を面接のなかでご教示いただけましたことで、貴社への志望度がさらに高まりました。 末筆ながら面接の御礼を申し上げますとともに、貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。 |
なおレアケースですが、面接のお礼状に対してわざわざ返信をくれる面接官もいます。その場合は放置せずに、再度お礼状を送ってください。忙しいなか返信をくれたことについてお礼を述べ、自分からのお礼状でやりとりを終えることがマナーです。
お礼状の例文【挨拶編】
転職・中途採用が決まったら、これまでの職場でお世話になった方々にお礼状を書きます。次の職場にどんな影響があるかもわかりませんので、同僚や上司、取引先などに丁寧に感謝を伝えて円満に退職できるように挨拶をしましょう。
転職時のお礼状では、「転職の概要」「これまでのお礼」「これからの展望」の3項目を文章に含めます。お礼状なので
お礼状に限らず手紙のマナーとして、自分のことを先に書くことは避けます。前文パートの文尾から続けて「さて 私事ではありますが」と書いて本文に移ります。
拝啓 秋麗の候 皆様方にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。さて 私事ではありますが、一身上の都合により○○株式会社を退職させていただくこととなりました。 在職中は、皆様から温かいご指導をいただきましたおかげで、公私ともに充実した時間を過ごすことができました。深く感謝いたしております。 これまでご指導いただいたことを忘れずに今後も精進して参る所存です。どうか今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。 季節の変わり目ゆえ、くれぐれもご自愛ください。 敬具 |
お礼状に使える書き出し・結びの例文
会社で出すお礼状の書き出しや結びには、定番となっているフレーズがあります。会社対会社のやりとりでは、以下のような定型文を用いることが一般的となります。
書き出しの定番フレーズ
時候の挨拶に続くフレーズとしては「貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。」が定番中の定番です。さらに続けて「平素は多大なご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。」とすればより丁寧な印象となります。
会社対会社ではなく、担当者個人宛てに出すお礼状であれば、時候の挨拶に続けて「〇〇様には(ますます)ご健勝のことと(心から)お喜び申し上げます。」という書き方もあります。この場合、「ますます」と「心から」はどちらか片方でも両方でも構いません。
会社を退職したときや転勤の際に、元の職場に出すお礼状では「皆様にはご清勝のこととお喜び申し上げます。」という書き方が一般的です。
結びの定番フレーズ
会社対会社のお礼状では、2つのフレーズでお礼状を締めくくります。
第一フレーズの例文
皆様のますますのご健勝と、貴社の一層のご発展を心より祈念申し上げます。 |
貴社のご繁栄と皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。 |
第二フレーズの例文
まずは略儀ながら書中にてお礼申し上げます。 |
まずは略儀ながら書中をもちまして、お礼申し上げます。 |
まずは略儀ながらとりあえず書中をもってお礼申し上げます。 |
時候の挨拶と例文については、当サイトの別記事で月別の具体例を多数紹介しております。
お礼状は直筆で
今回はお礼状について、基本構成や書き方のマナー、手紙やはがきでお礼状を出す際の注意点などをテンプレートや例文とあわせて説明いたしました。
ビジネスメールのやりとりが一般化した昨今であるからこそ、はがきや手紙で直筆のお礼状が届けば、感謝の意が一層伝わるでしょう。面倒と考えず、将来の人間関係をいっそう良好にするためにもお礼状はこまめに出すようにしましょう。


